1.はじめに

プロジェクトの目的達成に必要なものとはいったいなんでしょうか。計画を立てる、メンバーのモチベーションを上げる、目標達成の数字を掲げる。様々な方法が考えられます。しかし、多くの方が「計画なんて作ってもその通りにいかないじゃないか」と思っているのも事実。

たしかに、未来のことは誰にもわからない。目標を立てても、外部の要因により、プロジェクトが思ってもみなかった方向に展開することもある。しかし、だからといって目標を立てなくていい、計画を作らなくていいかというと、そうではない。ここでは、目的達成に必要な方法論について述べてみたい。

2. 目的を達成する際に、何を意識すればよいか

プロジェクトチームは、メンバー各自がバランスよく仕事をこなしてこそ円滑に進む。プロジェクトリーダー(以下、PL)の責務は、一メンバーとしての視点でプロジェクトを強引に進めることではなく、チーム全体の力でプロジェクトを円滑かつ順調に推進するよう働きかけることである。

別々の作業工程を担当するITプロジェクトでは、なによりもチームワークが大切である。これは今更説明するまでもないことである。そのため、PLの仕事として重要となる最もたるものが、メンバーのスケジュール管理とタスクの優先管理。一見、分断して見えるプロジェクトであっても、実際には誰か一人でも期限までに終わらなければ、そのプロジェクトは完遂しない。メンバー一人一人の仕事の進捗状況を常に把握して、タスク遅延が発生しているメンバーに対しては、積極的にその原因を足を運び、声をかけ、チーム内の士気を高め、タスク遅延が発生している原因を突き止める必要がある。

3. 目的達成までのプロセスを考える

「Plans are worthless, but planning is everything」。第34代アメリカ大統領、ドワイト・D・アイゼンハワーの言葉である。

PLには、メンバーに自由に開発を進めさせておいて、最後に間に合わなかったり、不具合があれば自分がなんとかすれば良い、と考えている方もいると思われる。それでは、決してプロジェクトは成功しない。計画を作るために資料を揃え、メンバーに話を聴き、関係者に相談する。そのプロセスの中でプロジェクトの持つ問題を深く洞察できる。そのことこそが、目的達成までのプロセスを考える下地となる。

4. 目的達成に対して何を意識するか

目的達成に対し、最も重要なのは、「明日から何をやればよいかがわかる程度」まで細かな作業に落とし込むことである。具体的には「SMART(スマート)の法則」と呼ばれる考え方が役に立つ。SMARTとは、下記の5つの単語の頭文字を並べたものである。

  • Specific(具体的、誰でも理解できる)
  • Measurable(計測可能、数字で表せる)
  • Assignable(誰がやるかが明確)
  • Realistic(現実的な内容)
  • Time-related(明確な期限がある)

それぞれ説明していこう。

4.1 Specific(具体的、誰でも理解できる)

何度も言うが、目標や計画は具体的でなければ意味がない。「プロジェクトを計画通り遂行する」や「顧客満足度を高める」では、何をしたらよいかわからない。

そのために、目標を達成した状態が想像できるようにイメージを持つことが重要である。そして、なぜその目標を設定したのかを、振り返ることも大切である。開発者の立場で見れば便利と思えるプログラムでも、販売部門のスタッフが操作する場合に使い勝手が悪いというのはよくあること。PLは、システムを使用する目的や操作する人のニーズをよく考えることが大切である。

4.2 Measurable(計測可能、数字で表せる)

目的達成には、明確で計測可能な「数字」がなければ判断できない。顧客満足度を高めるといった場合に、何%の顧客満足度を高めるかが不明確では目的が達成したかどうかわからない。

そしてあまりその目標が多きすぎてもプロジェクトが失敗する原因となる。「顧客満足度を100%に高める」という目標設定は現実的でないのは一目瞭然だ。そのため、より身近な、明日から取り組める小さな目標(スモールゴール)をできるだけ多く設定しよう。スモールゴールを達成していけば、その結果としてプロジェクトを成功へと導くことができる。

4.3 Assignable(誰がやるかが明確)

PLでありがちなのが、すべてのタスクを自ら手を下して作業を進めるといった誤った認識を持ってしまいがちだ。PLは、プロジェクトを計画通りに遂行できるように導くのも重要な資質となる。そのために、誰がそのタスクやるかが明確化することがPLのタスクといってもいい。「誰がやるのか」を曖昧にすると、結局誰もやらない。」

手間のかかる単純作業は、新米エンジニアに任せ、複雑なタスクは熟練したエンジニアに任せる。決してやってはいけないのは、「そのとき手の空いている誰か」でタスクを分担することであるので注意が必要だ。

4.4 Realistic(現実的な内容)

Measurableでも前述したが、あまり大きな目標を掲げるのは辞めて、現実的なものにすることを心掛ける。仕事でも上司から、今期の売上を2倍にすると言われると、最初から「そんなの出来るわけない」と諦めてしまうだろう。そして、かえって目標が控えめすぎてもメンバーのやる気を削いでしまう。

「頑張れば届きそう」なラインに目標を設定することがポイントである。

4.5 Time-related(明確な期限がある)

タスクには必ず期限(マイルストーン)を作成する。近年ではアジャイルで開発を行うことも多くなったが、タスク管理ツール等を使い、必ずメンバーに対して、タスク期限を設定しよう。「今年中に」というのは期限が長すぎるので、できるだけタスクを細かく分けてスモールゴールにし、月単位や週単位、できれば一日単位での期限を設定するのが望ましい。

5. おわりに

プロジェクトの目的達成にとって大切なことは、「Plans are worthless, but planning is everything」。つまり、目的達成までのプロセスを考え、適切なメンバーをアサインし、明確な期限を設定しながら現実的な目標達成に落とし込む。「SMART(スマート)の法則」を紹介したが、プロジェクトもできるだけSMARTに仕事が進むように働きかけることが必要だ。

written by Takaomi Murasaki promari.png

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